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ダヴィンチとは

最新低侵襲手術支援ロボット「ダヴィンチXi」とは

ダヴィンチは従来の腹腔鏡手術と同じようにいくつかの小さな切開部を作り外科医の操作に従って 内視鏡・メス・鉗子を動かして手術を行う内視鏡手術支援ロボットです。

操縦席に座った医師(術者)がモニター内の鮮明に拡大された3D画像を見ながら手元のコントローラで、患者さんに設置された内視鏡、メス、鉗子などのついた4本のロボットアームを遠隔操作し、手術を行います。

特徴とメリット

ダヴィンチの特徴

1. 体への負担が少ない
数カ所の小さな切開部から手術を行うため、傷が小さく、出血も抑えられ、手術後の回復が早く、患者さんの負担が軽減されます。
2. 鮮明な3D(3次元)画像
コンソールモニターには高画質で立体的な3Dハイビジョンシステムの手術画像が映し出されます。
3. 精密な動きを再現
医師がロボットアームに装着されている鉗子やメスを操作します。
ダヴィンチの鉗子はリスト構造を持ち、人間の手より大きな可動域と手ぶれ補正機能を備えています。
4. 低侵襲ロボット支援手術の実績
ダヴィンチは今日までに世界中で約250万件(2015年現在)のさまざまな外科手術で使用されてきました。

ダヴィンチで外科手術は新たな時代へ

メリット

患者さんにしい「ダヴィンチ」手術
体への負担が少なく、入院期間の短縮が可能

ダヴィンチ手術の特長としては、手ぶれがなく、精密な操作が可能で、その動きの自由度は人間の手以上のものがあります。腹腔鏡手術と同様に切開部が小さく、傷跡や出血量も最小限に抑えられ、術後の早期回復、入院期間の短縮にも繋がるなど患者さんの体への負担も少ない低侵襲手術が可能となり、開腹手術と比べ、さまざまなメリットがあります。

メリット1
切開部が小さく、
瘢痕(傷跡)がほとんど残らない
メリット2
出血量が少ない
メリット3
麻薬性鎮痛薬の必要性が少ない
メリット4
入院期間が短い
メリット5
合併症が少ない
メリット6
回復が早い

久留米大学病院×ダビンチ

手術支援ロボット「ダヴィンチXi」を導入しました

久留米大学病院で導入した福岡県南部では初めてとなる最新機種であるダヴィンチXiは、従来機種のダヴィンチSまたはSiと比較し、さらなる手術操作の安全性、作業効率向上のために多くの改良と工夫がなされており、その機能発揮が期待されています。また将来的な多領域の手術にも柔軟な対応が可能です。

患者さんにとって、より一層の安心・安全で高度な医療の提供を目指します。

担当医からのメッセージ
藤田 文彦
ダヴィンチ(ロボット)手術について

内視鏡手術センター長 藤田 文彦

当院ではダヴィンチ・システム(Intuitive Surgical社製da Vinci Surgical System)を用いたロボット手術を導入しています。“ロボット手術”といっても、ロボットが勝手に手術を行うわけではなく、あくまで外科医が行う手術を支援するものです。患者さんの体に小さな穴を数カ所開け、そこにロボットの機器を装着して手術を行います。そのため、手術後の痛みを軽減でき、手術の創(きず)も目立たなくなります。そして、従来の内視鏡手術に比べると、ロボット手術では手ぶれが防止され、多関節機能を生かした細かい手術操作が可能となります。また、ダヴィンチ・システムでは3次元立体画像を用いて拡大視野で手術を行うことができます。一方、ロボット手術の欠点としては、「手術機器で触れた感覚がわからないこと」、「手術中のトラブルへの対応には豊富な経験と知識が必要になること」などです。当院では、ロボットを操作する資格を持った経験豊富な医師が担当するようにしており、手術室スタッフの教育体制も整えています。各領域における具体的な手術内容については、「担当医からのメッセージ」をご参照ください。病院全体をあげて、患者さんにより安全な手術を提供できるように取り組んでいます。

井川 掌
泌尿器がんのロボット支援手術

泌尿器科 診療部長 井川 掌

久留米大学病院では2016年6月にロボット手術の最新支援機種ダヴィンチXiを導入し、前立腺がんに対する前立腺全摘術を開始致しました。その後順調に症例を重ね、2019年1月までに約160例に実施、さらに2017年8月からは比較的小さな腎がんに対する腎部分切除術も開始し、約50例に実施してまいりました。

早期の前立腺がんに対する効果の高い治療法の1つに手術治療があります。前立腺がんの手術は歴史的に開腹手術に始まり、2000年代はじめ頃から内視鏡下に行う腹腔鏡手術へと進歩してきました。これにより術後の痛みが減り、回復も早くなりましたが、術後合併症である尿漏れや勃起障害などは減少したものの、依然一定の割合で認められていました。その後2009年頃からわが国でも導入されてきたのがロボット支援手術です。内視鏡や電気メスなどの手術器具を術者がロボットアームを遠隔操作して動かす点が従来の腹腔鏡手術と大きく異なります。これにより拡大した良好な3D(立体視)視野での操作や手振れの無い、人間の手以上に繊細な動きができるなどの利点があり、より正確な手技が可能となりました。つまり術中・術後合併症の軽減、患者さんのQOLの改善など治療成績の向上が期待できます。また腎がんについてもロボット手術により出血の軽減や腎機能の温存など成績の向上が得られています。

わが国におけるロボット手術は2012年の前立腺がんから2016年の腎がん、そして2018年には胃がん、大腸がん、子宮がん、肺がんに対しても保険適用が拡大され、当院でもこれらのがんに対するロボット手術が開始されました。最新支援機種であるダヴィンチXiは種々の高度機能が備わっており、様々な症例に対して柔軟に対応することが可能です。がん診療はわが国における医療で最も重要な領域の1つであり、筑後地区におけるがんの外科治療に当院のロボット手術が大きく貢献できることが期待されます。

対象疾患(前立腺がん)の詳細はコチラ

津田 尚武
産婦人科でのロボット支援下手術

産婦人科 診療部長 津田 尚武

産婦人科領域でのロボット(ダヴィンチ)手術としては、早期の子宮体癌に対するロボット支援下子宮悪性腫瘍手術が2018年4月より保険適応となりました。(適応疾患:子宮体癌IA期 類内膜腺癌grade1,2)

ロボット(ダヴィンチ)を用いた子宮悪性腫瘍手術は開腹手術と比較して、小さい傷、少ない出血量、手術による癒着が原因となる腸閉塞などの合併症の軽減、それらにより手術後の社会復帰が早いといった利点が報告されております。また、同じ低侵襲手術である腹腔鏡下での子宮悪性腫瘍手術に対しても、三次元拡大視野でロボット手術器具の先端が人間よりも優れた手首関節機能を有するため、より精密な手術手技が可能となる画期的な手術方法です。

久留米大学産婦人科では内視鏡に精通した婦人科腫瘍グループにより、2018年11月より早期子宮体癌に対するロボット支援下子宮悪性腫瘍手術を開始し、2019年7月より保険収載の施設認定を取得し、健康保険の枠組みで手術を施行しております。当科でのロボット支援下子宮悪性腫瘍手術後の入院期間は最短で5日目に退院となります。(開腹手術は9日目に退院)

本手術に関するお問い合わせは、久留米大学病院産婦人科外来(ロボット手術担当:津田尚武、寺田貴武)までご遠慮なくお尋ねください。

磯邉 太郎
ロボット支援下胃癌手術

外科(上部消化管外科部門) 助教 磯邉 太郎

胃がん患者さんの体への負担が少ない治療の一つとして、腹腔鏡下胃切除術があります。開腹手術と比べて、出血が少ない、痛みが少ない, 術後の回復が早い, 社会復帰が早い、傷が目立ちにくいなどの利点が挙げられます。手術自体もスコープによって拡大された鮮明な画像を見ながら行うことで、視覚的にもより正確な操作が行えます。しかし、関節機能がない長い鉗子による手振れや角度の制限があり、技術的には難易度が高く習熟に時間を要します。

今回ご紹介するロボット支援下胃切除手術は、今までの腹腔鏡下手術の利点をさらに向上させうる医療技術です。正確には “外科医による腹腔鏡下手術をコンピューター制御で支援するロボット“になります。われわれが使用する手術支援ロボットは、intuitive surgical社の“da Vinci”です。ダヴィンチを用いることで、外科医は自然な奥行き感が得られる立体的な3D画像を見ながら、手ブレ防止機能と術者の思った通り自由に曲がる多関節鉗子を操って、複雑で細やかな動きをすることができます。このため、従来の腹腔鏡下手術と比べて、より繊細で安全性の高い手術治療が期待されています。実際に日本で行われた胃癌手術の臨床試験では「術後膵液漏」という合併症が腹腔鏡手術よりもロボット手術で少ないことが明らかとなり、2018年4月より保険収載となりました。

藤田 文彦
ロボット支援腹腔鏡下直腸がん手術

外科(下部消化管外科部門) 診療部長 藤田 文彦

久留米大学病院の大腸外科グループでは、これまでの多くの腹腔鏡手術の実績をもとにロボットを用いた直腸がん手術を施行しています。このロボット支援下の直腸癌手術は、日本では2018年4月から保険適応となっています。また、このロボット手術の執刀は、日本内視鏡外科学会から腹腔鏡手術の技術を認定された医師がダヴィンチの認定ライセンスを受けて行っており安心です。手術の介助につく看護師や臨床工学師も特別なトレーニングを受けています。

【ダヴィンチ手術の特徴】
これまでの腹腔鏡手術と比較した最大のメリットは、使用する機器に関節機能がついており、手のように曲げて使用することができるため、より繊細な手術が実現します。また、人間の手ブレが伝わらないため、安定した手術操作が可能となります。特に直腸がん手術では、狭い骨盤の中で周囲の臓器や血管、神経などに注意しながら手術を進める必要があり、これまでの腹腔鏡手術では操作が難しかった部分も容易に操作することができるようになりました。このダヴィンチはとても高価なロボットですが、患者さんの負担となる手術料はこれまでと変わりません。

光岡 正浩
呼吸器外科におけるロボット手術

呼吸器外科 診療部長 光岡 正浩

【保険収載】
肺癌および縦隔腫瘍に対する手術をロボット支援下に行うことが、2018年4月からようやく日本でも保険収載されるようになりました。それまでは自費で行われていましたが、これでより多くの肺癌手術が保険適応下で受けられるようになったわけです。
久留米大学では技術認定のための必要手続きを終え、2018年12月からロボット支援下肺悪性腫瘍手術を開始しました。

【肺癌手術の変遷】 肺癌手術の歴史は、以前の大開胸手術から小開胸手術、胸腔鏡下手術へと移行してきました。今では胸腔鏡下手術が肺癌手術の主流と言っても過言ではなく、当院では約9割を胸腔鏡下で行っています。一言に胸腔鏡下手術といっても、その方法には病院や医師によって様々なものがあります。勿論症例によっては大開胸手術が必要な場合もあります。これらの歴史の中で積み重ねられたデータのもとで、胸腔鏡下手術の方法・安全性・確実性が確立されてきました。一方でロボット支援下手術は、保険収載になってから全国でこの手術の導入が一機に加速される傾向にあります。新しい手法であるため、その有用性は今後症例が蓄積されてから出されることになります。

【ロボット手術の今後】 術者側からすれば、手術器具の3つの関節を胸腔内で器用に動かすことができ、画像の進歩によって奥行きが明瞭となり、カメラの操作も術者が思うように行うことができるようになった点などから、その操作性はかなり向上したと感じています。今後はその合併症・コスト面・教育面などにおいても評価が進んでゆくことでしょう。当院ではロボット手術に積極的に取り組んでおり、実際にどのアプローチを選択するかは病気の状態と患者さんのニーズの両面から症例毎に検討して手術方法を決定しています。

酒井 久宗
ロボット支援下肝切除術

外科(肝胆膵外科部門) 准教授 酒井 久宗

腹腔鏡下肝切除やロボット支援下肝切除は、開腹肝切除に比較して身体への負担が少ないことから低侵襲肝切除と言われています。肝切除術は開腹手術でも難度の高い手術であり、腹腔鏡下肝切除においては、高い技術と経験が必要となります。胃や大腸手術は腹腔鏡手術が一般的となっていますが、腹腔鏡下もしくはロボット肝切除を行うにあたっては、厚生労働省・学会により厳しい施設基準・術者条件が定められており、施行できる施設は限られています。
当院では腹腔鏡下肝切除を550例経験してきました。開腹肝切除に比較して術中出血量の低下、合併症の改善、術後入院期間の短縮が得られており、手術死亡率は0/550例(0%)です。
2022年4月よりロボット支援下肝切除が保険収載されました。当院でも2022年12月よりロボット支援下(ダヴィンチXi)肝切除を開始しています。ロボット支援下肝切除を開始して、①高画質で立体的な3D画像、拡大視効果による微細な解剖の理解、②多関節機能(7つの多関節)と術者の手ぶれ防止機能による安全な脈管の処理、を実感し、腹腔鏡下肝切除に比較して、より精緻で安全な肝切除が施行できると考えています。
当科では2023年4月現在、日本肝胆膵外科学会・日本内視鏡外科学会が定めた一定数のロボット支援下高難度肝切除(亜区域・区域・葉切除)を経験しており、すべての肝切除術式でロボット支援下肝切除が可能となっています。

Q&A

Q1.ダヴィンチはどんな病気の手術にも適応できるのですか?
ダヴィンチを用いた手術は、主に、前立腺がん、腎がん、胃がん、食道がん、直腸がん、子宮体がん、肺がんに対して適応となっております。
そのうち当院では、健康保険の対象となる以下の手術を実施しております。(2020年7月時点)
・前立腺がんに対する前立腺全摘術
・腎臓がんに対する腎部分切除術
・胃がんに対する胃切除術
・子宮体がんに対する子宮悪性腫瘍手術
・直腸がんに対する直腸切除・切断術
・肺がん、縦隔腫瘍に対する腫瘍手術
※手術を必要とするすべての疾患がダヴィンチを用いた手術の対象となるわけではありません。
Q2.入院費用はどれくらいかかりますか?
2012年4月より、ダヴィンチによる前立腺摘出術が健康保険の適用となり、2018年度診療報酬改定により新たに健康保険の対象となる手術が拡大しております。そのため、先進的な医療であるにも関わらず、医療費の負担は従来の手術とあまり変わりません(手術の種類により金額は異なります)。
また、高額療養費制度(*)を利用することで窓口負担を少なくすることが可能です。

○ダヴィンチによる前立腺全摘術
 ・入院日数:13日間
 ・窓口負担額
   健康保険(3割負担):約60万円
   高額療養費制度【区分エ】:約14万円

○ダヴィンチによる腎部分切除術
 ・入院日数:11日間
 ・窓口負担額
   健康保険(3割負担):約49万円
   高額療養費制度【区分エ】:約13万円

○ダヴィンチによる胃切除術
 ・入院日数:15日間
 ・窓口負担額
   健康保険(3割負担):約65万円
   高額療養費制度【区分エ】:約15万円

○ダヴィンチによる胃全摘術
 ・入院日数:16日間
 ・窓口負担額
   健康保険(3割負担):約68万円
   高額療養費制度【区分エ】:約15万円

○ダヴィンチによる噴門側胃切除術
 ・入院日数:16日間
 ・窓口負担額
   健康保険(3割負担):約65万円
   高額療養費制度【区分エ】:約15万円

○ダヴィンチによる直腸切除・切断術(低位前方切除術)
 ・入院日数:15日間
 ・窓口負担額
   健康保険(3割負担):約70万円
   高額療養費制度【区分エ】:約15万円

○ダヴィンチによる直腸切除・切断術(低位前方切除術)、人工肛門造設術併施
 ・入院日数:20日間
 ・窓口負担額
   健康保険(3割負担):約75万円
   高額療養費制度【区分エ】:約15万円

○ダヴィンチによる子宮悪性腫瘍手術
 ・入院日数:10日間
 ・窓口負担額
   健康保険(3割負担):約53万円
   高額療養費制度【区分エ】:約13万円

○ダヴィンチによる拡大胸腺摘出手術
 ・入院日数:14日間
 ・窓口負担額
   健康保険(3割負担):約59万円
   高額療養費制度【区分エ】:約14万円

○ダヴィンチによる縦隔悪性腫瘍手術
 ・入院日数:14日間
 ・窓口負担額
   健康保険(3割負担):約59万円
   高額療養費制度【区分エ】:約14万円

○ダヴィンチによる肺悪性腫瘍(区域切除)手術
 ・入院日数:14日間
 ・窓口負担額
   健康保険(3割負担):約68万円
   高額療養費制度【区分エ】:約14万円

○ダヴィンチによる肺悪性腫瘍(肺葉切除)手術
 ・入院日数:14日間
 ・窓口負担額
   健康保険(3割負担):約74万円
   高額療養費制度【区分エ】:約14万円

○ダヴィンチによる良性縦隔腫瘍手術
 ・入院日数:14日間
 ・窓口負担額
   健康保険(3割負担):約34万円
   高額療養費制度【区分エ】:約14万円

※上記金額は、入院費用、食事代等を含んだ当院における概算金額(目安)を記載しております。詳細については、医事課窓口でお尋ねください。
※また、高額療養費制度(*)は、患者さんによって窓口の負担額が異なりますので、負担区分及び負担金額については下記のホームページをご覧ください。

(*)高額療養費制度について
出典:厚生労働省ホームページ 高額療養費制度を利用される皆様へ

お問合せ

久留米大学病院
〒830-0011 福岡県久留米市旭町67番地
代表:0942-35-3311(月曜日~金曜日 8:30 ~ 17:00)