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福岡県認知症医療センター指定病院
認知症について
認知症とは
人はこの世に誕生してから成長していくうえで、様々な能力が発達していきます。中でも考えたり記憶したり判断したりなどを知的な能力(知能)といいますが、この能力も成長していきます。しかしながら、高齢になるにつれ徐々に、運動機能や感覚機能(視覚や聴覚など)等の他に、記憶力が低下したりなど色々な精神機能が今まで通りに働かなくなることもわかっています。
認知症はこの正常に発達した知的・精神機能が何らかの原因や病気により、後天的にかつ持続的に低下していくことで、日常生活や社会生活が困難になってしまった状態をいいます。認知症症状を認める疾患(病気は)数多くありますが、その中で代表的なものとして、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症があります。今日認知症の診断基準に最も用いられる診断基準の1つが、アメリカ精神医学会(American Psychiatry Association:APA)によるDSM-5があります。
Q. もの忘れと認知症はどう違うのでしょうか?
高齢者のもの忘れは、脳の老化による記憶力の低下であり、病気ではありません。一方認知症は病気であり、早期に適切な治療を開始しないと症状が更に進んでいきます。もの忘れと認知症の初期症状は似ているため、判断に困ることが少なくありません。以下に、もの忘れと認知症の違いについてまとめていますが、判断に迷った場合はいつでも専門医に相談しましょう。
加齢によるもの忘れの場合、記憶の帯はつながっており、何らかのヒントを与えると体験など記憶を呼び戻すことができますが、認知症の場合は、記憶の帯がすっぽり抜け落ちるため、体験したことそのものを忘れてしまいます。
加齢によるもの忘れ | 認知症 | |
---|---|---|
原因 | 加齢によるもの | 脳の病気 |
記憶 | 体験したことの一部を忘れる | 体験全体を忘れる 新しいことを記憶できない |
見当識 | 時間や場所など見当がつく | 時間や場所などの見当がつかない |
進行性 | すぐには進行しない | 進行する |
もの忘れの自覚 | もの忘れを自覚している | もの忘れに対する自覚が乏しい |
日常生活への支障 | 特に支障はない | 日常生活に支障がある |
他の精神症状 | 他の精神症状は伴わない | 他の精神症状を伴うことが多い |
Q. 認知症の診断基準であるDSM-5 (American Psychiatry Association:APA) はどのようなものですか?
各種の認知症疾患ごとにその定義は異なりますが、共通する診断基準は以下の通りです。
A.1つ以上の認知領域(複雑性注意、遂行機能、学習および記憶、言語、知覚-運動、社会的認知)において、以前の行為水準から有意な認知の低下があるという証拠が以下に基づいている
B.毎日の活動において、認知欠損が自立を阻害する(すなわち、最低限、請求書を支払う、内服薬を管理するなどの、複雑な手段的日常生活動作に援助を必要とする)
C.その認知欠損は、せん妄の状況でのみ起こるものではない
D.その認知欠損は、他の精神疾患によってうまく説明されない(例:うつ病、統合失調症)
- 本人、本人をよく知る情報提供者、または臨床家による、有意な認知機能の低下があったという懸念、および
- 標準化された神経心理学的検査によって、それがなければ他の定量化された臨床的評価によって記録された、実質的な認知行為の障害
B.毎日の活動において、認知欠損が自立を阻害する(すなわち、最低限、請求書を支払う、内服薬を管理するなどの、複雑な手段的日常生活動作に援助を必要とする)
C.その認知欠損は、せん妄の状況でのみ起こるものではない
D.その認知欠損は、他の精神疾患によってうまく説明されない(例:うつ病、統合失調症)
Q. 認知症症状を呈する疾患 (病気) はどのようなものがありますか?
認知症の原因としてはアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症が多いとされますが、様々な疾患が認知症の原因になります。認知症症状を呈する疾患の中には、正しく診断して治療すれば、症状が改善(軽減)するものもあります(Treatable Dementia)。そのためには、早期に鑑別診断などの診断を行って治療していくことが大切です。判断に迷った場合は、専門医療機関を受診しましょう。
認知症の主な原因疾患
脳血管障害
脳出血、脳梗塞など
神経変性疾患
- アルツハイマー型認知症
- 非アルツハイマー型認知症・・・レビー小体型認知症、ピック病、神経原線維変化型老年認知症、嗜銀顆粒性認知症、運動ニューロン疾患に伴う認知症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、ハンチントン病など
その他の原因疾患
- 内分泌・代謝中毒性疾患・・・甲状腺機能低下症、下垂体機能低下症、ビタミンB12欠乏、ビタミンB1欠乏、ペラグラ、脳リピドーシス、ミトコンドリア脳筋症、肝性脳症、肺性脳症、透析脳症、低酸素症、低血糖症、アルコール脳症、薬物中毒など
- 感染性疾患・・・クロイツフェルト・ヤコブ病、亜急性硬化性全脳炎、進行性多巣性白質脳症、各種脳炎・髄膜炎、脳腫瘍、脳寄生虫、進行麻痺など
- 腫瘍性疾患・・・脳腫瘍(原発性、続発性)、髄膜癌腫症など
- 外傷性疾患・・・慢性硬膜下血腫、頭部外傷後後遺症など
- その他・・・正常圧水頭症、多発性硬化症、神経ベーチェット、サルコイドーシス、シェーングレン症候群など
※老年期痴呆診療マニュアル第2版:日本医師会編長谷川和夫監修(南江堂)より一部改変