リハビリテーション部
部門紹介
整形外科
整形外科病棟では、当院整形外科の腫瘍班、脊椎班、外傷班からの処方によりリハビリテーションを行っています。腫瘍班では四肢・体幹の腫瘍治療後や骨転移の骨折術後に対して運動器リハビリテーションだけでなくがんのリハビリテーションも行っています。脊椎班では頸椎・腰椎疾患を中心に術前評価から術後を踏まえてのリハビリテーションを行っています。外傷班では四肢・体幹の外傷による術後を中心に関わっています。当院は高度救命救急センターを擁しているため、頚髄損傷や多発外傷など重症の方も入院され、対象の方は多岐に渡ります。
当院からは地域のリハビリテーション専門施設に転院される方が殆どですが、一日でも早く家庭および社会生活への復帰をサポートすべくスタッフ一同よりよいリハビリテーションを提供できるよう努めています。
脳神経外科
当院脳神経外科病棟には、脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷、脊椎・脊髄疾患など、急性期治療を必要とした患者さんが入院しています。リハビリテーションは、医師や看護師、ソーシャルワーカー、管理栄養士、薬剤師など多職種と連携し、必要に応じて早期から行っています。早期リハビリテーションを行うことで、過度な安静よる筋力低下や肺炎などを防ぎ、運動機能の改善を促し、座ったり歩いたりといった基本的な動作から、手の機能訓練、食事やトイレ、着替えなどの日常生活動作が行えるよう、病棟内から訓練を行っています。また、高次脳機能障害に対して、評価をもとに機能の改善と日常生活における様々な場面を想定した訓練を行っています。手術、化学療法や放射線治療など継続した治療が必要な方も、並行してリハビリテーションを行い、QOL(生活の質)の維持・向上を目指しています。
高度救命救急センター
高度救命救急センターでは緊急治療を必要とする重症患者さんが多く入院をされます。近年集中治療領域でのリハビリテーションの重要性はますます高まってきています。当院の高度救命救急センターには、理学療法士、作業療法士を配置しています。理学療法士には呼吸療法認定士や心臓リハビリテーション指導士等の資格を有した専門的なスタッフを配置し入院早期からのリハビリテーションを行っています。また救命センターでは全身管理に伴い、人工呼吸器装着患者さんも多く、人工呼吸器離脱後には言語聴覚士による嚥下評価を行い、摂食に向けたリハビリテーションも行っています。早期からリハビリテーションを行い、様々な身体機能を維持、改善、再獲得するためにも、各科の医師や看護師、臨床工学技士、ソーシャルワーカーと多職種で連携し、入院早期からの積極的なリハビリテーションに取り組んでいます。
腎臓リハビリテーション
当院腎臓センターでは、慢性腎不全患者さんの人工透析施行中に運動療法を実施しています。透析患者さんは、病状によるものや活動性低下により四肢体幹の筋力低下をきたし廃用症候群に陥り、さらに病状の増悪を招くと報告されています。
運動内容は、四肢体幹のストレッチ、筋力トレーニング、電気刺激療法、持久力運動を実施しています。持久力運動としては、透析中でも寝た状態で行えるリカンベントタイプのエルゴメーターを用いて持久力運動を行っています。運動時間は、人工透析開始後30分経過後開始し、約20~30分程度の運動療法を行っています。また、透析患者さんは、運動習慣が少ないと報告されているため、自宅でできる運動や活動性を高めるよう運動指導を医師・看護師と連携して行っています。
心臓リハビリテーション
当院心臓リハビリテーション(以下心リハ)チームでは心不全、虚血性心臓病、下肢動脈疾患、心臓血管術後などの疾患の方々に対し安全な体力向上と活動拡大、再発予防を目指した運動療法を実施しています。運動内容は身体機能評価、運動負荷試験(心肺運動負荷試験も含む)を実施し、患者さんに応じた運動強度で有酸素運動、レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)を行っています。また従来の心リハが困難な重複障害を有した心不全患者、運動耐容能が乏しい下肢動脈疾患の方に対し骨格筋電気刺激療法も併用しています。心リハチームは、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカー、臨床工学技士らと共に多職種で構成されている心不全支援チームにも所属しており運動面のみならず、精神面でも心不全患者の方々のサポートも行っています。
呼吸リハビリテーション
当院では、手術前の患者さんに対し、術前呼吸リハビリテーションを実施しています。対象は、心臓、肺がん、食道がん、頭頸部がん、胃がん、肝がんなどの手術を予定していて、合併症リスクが高い患者さんです。これらの外科術後は、肺感染症、肺水腫、無気肺、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)などの呼吸器合併症を生じる危険性があり、その合併症を予防するためには、術前からの呼吸リハビリテーションが重要と言われています。内容は、インセンティブ・スパイロメトリなどを使用した深吸気の指導、腹式呼吸練習、呼吸筋トレーニング、排痰法の指導、肩甲骨や頸部のストレッチの指導、オリエンテーション等を行います。また、手術後の身体の状態を想定し、それぞれに合った起き上がり方や、咳の仕方などを個別に指導し、術後順調に回復できるようサポートします。
がんリハビリテーション
当院では、平成22年にがんのリハビリテーションの施設認可を取得し、血液腫瘍、消化器がんおよび小児がんを中心にがんのリハビリテーションを実施しています。リハビリテーション内容としては、当院リハビリテーション医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士及び各診療科の医師と検討し、ストレッチ、筋力トレーニング、バランス練習、および持久力運動を組み合わせた久留米大学病院がんのリハビリテーションプログラムを作成し実践しています。特に、血液・腫瘍内科では、専用病棟(全室クリーンルーム内)にてエルゴメーター等の機器を設置し、がん患者さんにおける安全で積極的な運動療法を実施しています。また、骨転移等で疼痛コントロール目的に入院された患者さんに対しても、動作指導および介助指導等疼痛緩和目的のリハビリテーションも行っています。さらに、当院はがん診療拠点病院でもあり、臨床だけでなく久留米大学大学院や認定看護教育センター等での講義やがんのリハビリテーション企画者研修を終了し、がんのリハビリテーションの施設基準を取得するための研修も企画開催し、がん関連医療従事者の教育にも力を入れています。
内科(消化器系)
サルコペニア(筋肉量減少や筋力低下を特徴とする病態)やフレイル(要介護状態の予備群)は、さまざまな消化器疾患をお持ちの患者さんの病態や生命予後にかかわります。消化器疾患におけるサルコペニアやフレイルの改善には、食事療法や栄養療法,運動療法,薬物療法等さまざまな側面からの対策が必要であり、多職種による介入が重要です。私たちは、2013年から多職種による肝臓リハビリテーションチームを設立し、2018年からはリハビリテーション専門職の病棟専従配置により、消化器病患者さんの筋肉量や運動能力の維持改善に取り組んでいます。さらに、当院の消化器内科や栄養部、佐賀大学医学部、国立国際医療研究センターと共同して栄養・運動療法の開発と啓発活動を行っています。特に、肝臓病に対する運動プログラム「肝炎体操」や「ヘパトサイズ®」はテレビや新聞などでも紹介され、広く利用されています。
SICU(外科系集中治療室)
SICU(外科系集中治療室)では、心臓血管外科や脳外科、消化器外科、呼吸器外科など様々な手術後の管理を主に行っており、敗血症や肺炎などの急性期における集中治療管理を行っています。当院では、SICU専従医師、看護師、理学療法士、臨床工学技士、栄養士など多職種で早期離床・栄養について毎日カンファレンスを行っており、患者さんの状態について情報共有しています。
集中治療入室患者さんは、長時間安静していることで身体機能の低下や、認知機能が低下することもあり日常生活動作に支障をきたします。また、術後は人工呼吸器の影響や傷の痛みにより、肺に酸素が入りにくくなる無気肺や、痰が上手く出せず肺炎など発症することもあります。そのため、術後早期より筋力増強運動や呼吸療法、および早期離床(座位・立位・歩行など)等の積極的なリハビリテーションを実施しています。集中治療室から一般病棟へスムーズに移行して、一日でも早く日常生活へ戻れるように支援しています。
ADL維持向上体制加算
当院では循環器内科病棟と消化器内科病棟に理学療法士または作業療法士を専従配置しています。そこでは、定期的な日常生活動作(以下ADL)評価やADL維持向上等を目的とした指導、転倒予防を含めた安全管理等を行うことが主な業務です。この加算体制ではリハビリテーション処方前から医師や看護師・管理栄養士・ソーシャルワーカー等と協働して患者さんのADLを評価し、ADL維持、向上や褥瘡予防に努めることが求められます。入院当日に運動機能や認知機能を評価し、転倒の恐れがある場合は多職種とカンファレンスを行い患者さんの状態に合わせて、転倒予防に必要な指導を行っています。転倒は患者さんのADLやQOL(生活の質)を低下させるだけではなく、本来行うべき治療を阻害するため、入院中に運動機能低下を起こす危険性があると判断した場合、病棟の特徴やニーズに合わせた多職種連携を行い、リハビリテーションの必要性を検討し疾患別リハビリテーションにとらわれない新たな働き方が出来る体制をとなっています。
研究サポート
(大学院医学研究科 リハビリテーションバイオメカニクス学講座/臨床研究・治験)
わが国のリハビリテーション分野は、高齢化社会や複雑・高度化する医療現場の担い手として注目されているものの、高度化する医療に対応し切れていない部分があります。このような背景から、当院ではリハビリテーションバイオメカニクス学講座を平成19年4月より開設し、高度な職業人及び教育者の養成を実施しています。また、リハビリテーション医療におけるEvidence-Based Medicineの実践に注目して、人体の運動機能、すなわちバイオメカニクスを客観的かつ科学的に評価する方法の習得のために、評価の実際、データ取得、データ処理、統計処理、論文作成・発表といった一連のリハビリテーションにおけるバイオメカニクスの科学的評価に特化した講義を実施しています。さらに、リハビリテーション部では、各診療科と共同で、様々な臨床研究や治験を行っています。当部が各診療科と密接に連携し、最先端の高度医療の開発に関わることができることも魅力の一つです。