腫瘍センター
頭頸部がん
鼻、副鼻腔がん
1. 症状
2. 診断
3. 上顎洞癌治療
上顎洞癌ステージ別5年粗生存率
4. 篩骨洞がん治療
篩骨洞がんは鼻腔と頭蓋底部の境目にできる腫瘍であり、容易に眼窩、頭蓋内に進展します。治療は頭蓋底手術が中心となります。当院では大学病院の特性を生かし、耳鼻咽喉科・頭頸部外科、脳神経外科、放射線科、形成外科が頭蓋底チームを形成し治療にあたります。篩骨洞がんの治療成績を示します。
篩骨洞がんに対する化学放射線治療と頭蓋底手術の治療成績(粗生存)
咽頭がん
1.上咽頭がん
東南アジアによく見られます。中、下咽頭がんと比較すると若年者にもみられることがあり、EBウイルスの関与が関与していると考えられています。頸部リンパ節転移をきたしやすく、発見された時にはすでに進行している状態であることがあります。
1) 症状
頸部リンパ節腫脹を主訴とすることが多くみられます。鼻閉、鼻出血、また滲出性中耳炎による難聴をきたすことがあります。進行すれば脳神経麻痺症状(複視、視力障害)をきたします。
2) 治療
上咽頭という場所は脳に近いため手術を行うのが困難であり、基本治療とて放射線と化学療法(抗がん剤)を組み合わせた治療を行います。また頸部リンパ節転移に関しても同時に放射線治療と化学療法を行います。治療後頸部リンパ節転移が残存した場合は頸部郭清術というリンパ郭清を行い、転移リンパ節を摘出します。当院では頭頸部外科と放射線科の合同で治療に当たります。1999年10月〜2018年12月までに久留米大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科及び放射線科で治療した初発上咽頭癌57症例の治療成績を示します。
3) 上咽頭癌の治療成績 (n = 57)
①ステージ別5年粗生存率
② ステージ別5年疾患時的生存
2.中咽頭がん
頸部リンパ節転移をきたしやすく、発見された時にはすでに進行している状態であることがあります。
1) 症状
嚥下時の違和感、口腔内出血がありますが、頸部腫脹が先行する場合もあります。進行すれば咽頭痛、呼吸困難、耳痛を伴います。
2) 治療
手術療法、化学療法、放射線治療を組み合わせた治療を行います。局所進行癌で拡大手術を行った場合は形成外科と協力して筋皮弁による再建手術を行います。また化学療法と放射線を組み合わせた化学放射線治療を放射線科と協力して行います。当院では早期中咽頭がんに対しては手術療法中心で行い、ダ・ヴィンチを使用するロボット手術の導入も試験的に開始されました。腫瘍のできる部位によっては化学放射線治療を行います。進行中咽頭がんに対しては導入化学療法を行い、腫瘍の反応を確認します。その後手術を行うのか、化学放射線治療を行うのかを決定します。この導入化学療法により手術を行わなくても予後のよい症例、すなわち導入化学療法後に化学放射線治療を行うことで臓器温存、機能温存が可能となりました。
3) 治療成績)中咽頭がん248例の治療成績 (1989年から2012年)
① ステージ別5年粗生存率
② ステージ別5年疾患特異的生存率
3.下咽頭がん
50から70歳代に多くみられ女性にくらべ男性に圧倒的に多い疾患です。生活習慣が影響しており、喫煙、飲酒がその原因と考えられています。特にアルコール常飲者での発生が多くみられます。以前は早期で発見されることは少なかったのですが、最近は上部消化管内視鏡の発達で早期に発見されることがしばしばあります。特徴として早期にリンパ節転移を来しやすく、局所進行した場合は咽頭、喉頭摘出が必要となる場合があります。アルコールとの関連性があるため、食道がんの合併が非常に多くみられます。上、中咽頭がんと比べると予後が悪いと報告されています。
1) 症状
咽頭違和感、咽頭痛が出てきますが、進行すれば嚥下障害、呼吸困難が出現します。また頸部リンパ節腫脹も早期に出現します。
2) 治療
手術療法、化学療法、放射線治療を組み合わせた治療を行います。早期であれば手術療法のみで治療することもありますが、ほとんどは化学放射線治療を行います。下咽頭進行がんに対しては導入化学療法を行いその効果を判定し、手術を行うのか化学放射線治療を行うのかを決定します。進行がんで手術を行う場合は咽頭、喉頭を摘出し、おなかの空腸を用いて食べ物の道を作ります。空腸を用いた下咽頭がんの手術は頭頸部外科、食道外科、形成外科と協力して行います。喉頭を摘出した場合は発声ができませんので人工喉頭を用いた意思伝達、食道による発声、またプロボックスという(TEシャント)を作成し発声することも可能となります。1971年から2018年までの間に当院で治療を行った下咽頭癌792例の治療成績を示します。
①ステージ別5年粗生存率
② ステージ別5年疾患特異的生存率
喉頭がん
1.症状
喉頭がんの中で声門がんは声帯に発生するがんで、声がれ が主な症状で声門上、声門下がんと比較すると早期に症状がでやすく、リンパ節転移が少ないといわれています。声門上、声門下がんは早期に症状がでることは少なく、咽頭違和感、呼吸困難、喀血などの症状が出現したときには進行状態であることが考えられます。また解剖学的にこの部位はリンパの発達が良好でありリンパ節転移を来しやすい状況にあります。
2.診断
喉頭内視鏡で腫瘍の確認を行い、生検で組織型の確定診断を行います。頸部リンパ節転移を調べるために頸部超音波検査を行います。喉頭がんは肺がん、食道がんの合併が多いため、CTやMRIで病期の広がりや重複がんを調べます。遠隔転移を調べるためにPET検査を行います。また下咽頭がんと同様に上部消化管内視鏡検査で食道、胃を精査します。
3.治療
手術療法、化学療法、放射線治療を組み合わせた治療を行います。早期がんであれば手術単独(経口的レーザー切除)、放射線治療単独(場合によっては化学放射線治療を行うこともあります)で治療を行います。局所で進行した喉頭がんでは喉頭摘出術を行うのが基本とされていますが、術後に無喉頭となりますので発声ができなくなります。当院では軟骨破壊のない局所進行喉頭がんに対して、放射線科と協力し臓器温存、機能温存の目的で選択的動注化学放射線治療を行っています。この治療は足の付け根の動脈からカテーテルを挿入し、腫瘍の栄養血管に直接抗がん剤を投与することで通常の全身抗がん剤投与よりも高容量の抗がん剤を腫瘍に投与できます。また同時に中和剤を全身に投与するため副作用を軽減することができます。この治療により喉頭温存率は飛躍的によくなり、患者さんのQOLが向上したと考えています。
2000年から2016年までに当科で治療した喉頭癌549例(声門癌422例、声門上癌127例)の治療成績を示します。
2)声門癌T別5年疾患特異的生存率
3)声門上癌T別5年粗生存率
4)声門上癌T別5年疾患特異的生存率
聴器がん
1.症状
耳のかゆみ、耳だれ、出血が多く、進行すれば耳痛や顔面麻痺をきたします。
2.診断
耳の中を顕微鏡で観察します。腫瘍を生検することで確定診断を行います。病変の広がりを調べるためにCT検査やMRI検査、また遠隔転移の有無を調べるためにPET検査を行います。
3.治療
手術療法、化学療法、放射線治療を組み合わせた治療が一般的ですが、頭頸部がんの中でもまれな疾患のため各施設により治療方針が異なるのが現状です。進行した聴器がんであれば頭蓋底手術などの拡大切除が必要になることがあり、術後の難聴など機能障害も大きくなります。当院では現在聴器がん、特に外耳道がんに対して選択的動注化学放射線治療を行っています。この治療は足の付け根の動脈からカテーテルを挿入し、腫瘍の栄養血管に直接抗がん剤を投与することで通常の全身抗がん剤投与よりも高容量の抗がん剤を腫瘍に投与できます。また同時に中和剤を全身に投与するため副作用を軽減することができます。
唾液腺がん
1.症状
ほとんどが腫瘤として触知されます。痛みや顔面神経麻痺が出現したときには進行している可能性があります。またリンパ節転移をきたした場合は頸部にしこりを触れることがあります。
2.診断
組織生検ではなく、腫瘍に針を刺し細胞を採取(細胞診)します。頸部超音波検査、CT、MRIで病変の広がりをPET検査で遠隔転移を調べます。
3.治療
有効な化学療法(抗がん剤治療)はなく、外科的に切除することが第一選択となります。基本的には顔面神経を温存し、腫瘍を摘出しますが悪性の場合は顔面神経を切除することもあります。切除後は神経を移植し可能な限り再建します。また下顎骨に浸潤のある場合は下顎骨を削ったり、切除することもあります。その場合は形成外科と協力して下顎の再建を行います。術後の病理検査の結果では追加治療として放射線治療を行う場合もあります。
2000年~2018年に当院で手術を行った耳下腺悪性腫瘍66例
2) 5年疾患特異的生存率
3) ステージ別5年粗生存率
甲状腺がん
1.診断
甲状腺腫瘍の多くは症状がなく、検診で発見されたり、他の病気で精査した際に見つかることがあります。進行すれば声がれ(反回神経に腫瘍が浸潤)や飲み込みが悪くなる症状がでることがあります。
触診:両手で甲状腺を触診し、唾液を飲み込んでもらいます。甲状腺は気管に付着していますので上下に動きます。これにより甲状腺にしこりがないかどうかを調べます。2.検査
1) 頸部超音波検査による痛みがなく、簡便であり侵襲の少ない検査です。この検査により甲状腺内の小さな結節や癌であれば頸部に転移したリンパ節を調べることが可能です。
2) 穿刺吸引細胞診
触診、頸部超音波検査で甲状腺にしこりが見つかった場合、そのしこりを切って調べるのではなく注射針で刺して吸引し細胞の検査を行うのが吸引細胞診です。この検査である程度良性、悪性の区別はできますが区別が困難なときもあります。また甲状腺悪性腫瘍の中には細胞診では診断が困難なものもあります。
3) CT
病変の広がりや、がんであれば転移や遠隔転移を調べるために行います。 MRI:がんが周囲の臓器にどのくらい浸潤しているのか、また血管にどれくらい浸潤しているのかを調べます。特に手術を予定している際に行います。 血液検査:甲状腺ホルモンの数値がどのくらいかを調べます。またサイログロブリンという甲状腺濾胞細胞で合成される蛋白質を測定することで腫瘍マーカーとしての役割をもっています。甲状腺がんで甲状腺全摘を行った患者さんは基本的には体のなかに甲状腺組織はないはずです。しかし、術後サイログロブリンが上昇したり、高値を示すことで甲状腺がんの再発、また再増殖の可能性があることがわかります。甲状腺全摘後のマーカーとしては非常に有用です。
3.甲状腺がんの種類
甲状腺がんに多いものから順に乳頭がん、濾包がん、髄様がん、未分化がんがあります。1) 乳頭がん
甲状腺がんの約70から85%を占めもっとも多いがんです。発育はゆっくりで女性に多いとされています。頸部のリンパ節に転移が多く、遠隔転移は肺に多くみられます。治療は外科的手術が第一選択で甲状腺の部分切除、あるいは全摘出術を行い気管周囲のリンパ節の郭清(リンパを取り除く手術)を行います。腫瘍が周りの臓器(気管、食道、反回神経)に浸潤していたり、リンパ節転移が多数みられたり、遠隔転移(肺転移、骨転移など)がある場合には術後にヨード治療を行うことがあります。
2) 濾胞がん
甲状腺がんの約5から10%を占めるがんで乳頭がんに次いで多い甲状腺がんです。リンパ節転移よりも血行性に遠隔転移(肺、骨)をきたします。外科的手術が第一選択で甲状腺の部分切除、あるいは全摘出術を行い気管周囲のリンパ節の郭清(リンパを取り除く手術)を行います。また遠隔転移が存在する場合は術後にヨード治療を行います。
3) 髄様がん
甲状腺がんの約1から2%を占めるがんで遺伝が関与しているものもあります。髄様がんの中には副腎腫瘍や副甲状腺腫瘍を合併しているものもみられます。カルシトニンというカルシウムの調節を行っている細胞ががん化したものです。進行がはやくリンパ節、肺、骨、肝臓に転移しやすい性質を持っています。治療は外科的手術が第一選択で甲状腺の全摘出術を行い気管周囲のリンパ節の郭清(リンパを取り除く手術)を行います。
4) 未分化癌
甲状腺がんの約1%を占めるがんです。男性、高齢者に多く見られます。きわめて進行の早いがんであり、急速に増大し、頸部圧迫感、呼吸困難を来します。リンパ節、肺、肝臓に転移をきたしやすい性質があります。手術、放射線、化学療法を行いますが、進行が急速なため手術ができないことが多く、放射線化学療法を行うことが多いのが現状です。予後は非常に悪く、1年生存はほとんど見込めません。
口腔がん
1. 症状
2. 検査
3. 治療
2)ステージ別5年疾患特異的生存率
院内がん登録情報
担当部署と専門医
部門 | 担当医 | 外来診療 |
---|---|---|
耳鼻咽喉科
・
頭頸部外科
|
梅野 博仁 | 火曜日午前、金曜日午前 |
千年 俊一 | 月曜日午前、水曜日午前 | |
小野 剛治 | 金曜日午前・午後 | |
深堀 光緒子 | 水曜日午前・午後 | |
三橋 亮太 | 木曜日午前・午後 | |
栗田 卓 | 火曜日午前・午後 | |
放射線科
(画像診断)
|
安陪 等思 | |
田中 法瑞 | 月曜日午前・午後 | |
放射線科
(放射線腫瘍センター)
|
服部 睦行 | 水曜日午前 |
村木 宏一朗 | 火曜日午前 | |
宮田 裕作 | 月曜日午後 | |
脳神経外科 | 坂田 清彦 | 月曜日午後、水曜日午前 木曜日午前・午後 |
顎顔面外科・形成外科 | 清川 兼輔 | 水曜日午前 |
病理部 |
患者さんご紹介の際には「紹介予約センター」をご利用ください。
予約専用フリーダイヤルTEL:0800-200-4897、FAX:0800-200-9489
紹介予約センター直通TEL:0942-27-5673、FAX:0942-31-7897