腫瘍センター
腎がん
はじめに
腎臓は、ちょうど肋骨の下端の高さで、左右、両方にソラマメのようなかたちをした臓器で、血液をこして尿を生成しています。腎臓の実質に発生する悪性腫瘍には、成人に発生する腎細胞がんと小児に発生するウィルムス腫瘍があります。腎臓には良性の腫瘍が発生することもありますが、腎臓に発生する約90%が悪性腫瘍と言われています。
腎細胞がんの発生頻度は、人口10万人あたり2.5人程度です。男女比は2~3:1で男性に多い傾向があります。以前は、目に見える血尿や側腹部の腫れ、側腹部の痛みなどの局所の症状や、原因のはっきりしない発熱、体重減少などの全身症状を契機として発見されることが多くみられました。しかし最近は、超音波検査やCT検査などが普及したことにより、健康診断や他の病気で検査を受けた際に偶然発見される、症状のない小さな(例えば直径3cm以下の)腎細胞がんが増加しています。がんの中では非常にゆっくりと大きくなるタイプが多いのですが、急速な悪化を示すタイプもみられます。静脈の中に腫瘍が広がる(腫瘍塞栓)傾向がつよく、他の臓器への転移を生じ易いがんです。転移は肺、骨、肝臓、脳、リンパ節に多くみられます。化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療が効きにくいのも特徴の1つで、以前はインターフェロン、インターロイキン2などを用いた免疫治療がよく行なわれていました。また、2008年以降はスニチニブ、ソラフェニブといった分子標的薬が使用できるようになり、現在ではがん細胞が免疫細胞を抑制することを解除する免疫チェックポイント阻害薬が登場し、それらを併用した治療法や分子標的薬と免疫チェックポイント阻害剤を併用した治療が主流となってきています。今後も新たな治療法の開発がすすむことが期待されています。
腎細胞がんの発生頻度は、人口10万人あたり2.5人程度です。男女比は2~3:1で男性に多い傾向があります。以前は、目に見える血尿や側腹部の腫れ、側腹部の痛みなどの局所の症状や、原因のはっきりしない発熱、体重減少などの全身症状を契機として発見されることが多くみられました。しかし最近は、超音波検査やCT検査などが普及したことにより、健康診断や他の病気で検査を受けた際に偶然発見される、症状のない小さな(例えば直径3cm以下の)腎細胞がんが増加しています。がんの中では非常にゆっくりと大きくなるタイプが多いのですが、急速な悪化を示すタイプもみられます。静脈の中に腫瘍が広がる(腫瘍塞栓)傾向がつよく、他の臓器への転移を生じ易いがんです。転移は肺、骨、肝臓、脳、リンパ節に多くみられます。化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療が効きにくいのも特徴の1つで、以前はインターフェロン、インターロイキン2などを用いた免疫治療がよく行なわれていました。また、2008年以降はスニチニブ、ソラフェニブといった分子標的薬が使用できるようになり、現在ではがん細胞が免疫細胞を抑制することを解除する免疫チェックポイント阻害薬が登場し、それらを併用した治療法や分子標的薬と免疫チェックポイント阻害剤を併用した治療が主流となってきています。今後も新たな治療法の開発がすすむことが期待されています。
診断
1. 超音波検査
人間ドックなどの健康診断をはじめ、診察のときに最初におこなわれる検査です。腫瘍の有無の判定には有用ですが、腫瘍の性質の判定(良性か悪性か)が困難な場合もあります。2. CT検査
造影剤を使用して撮影する事により腫瘍の性状の判定に役立ちます。同時に転移や静脈内に伸びた腫瘍塞栓の有無を診断できます。3. MRI検査
CT検査同様、腫瘍の性状や静脈内の腫瘍塞栓進展の判定に役立ちます。4. 血管造影
足のつけ根の動脈から直接カテーテルを挿入して腎臓の血管を造影します。 腫瘍の性状判定の補助的診断に用いますが、近年ではCTやMRIの進歩で、腎動脈を詰める塞栓術以外ではあまりおこなわれなくなっています。5. 生検
通常では生検はおこないません。画像診断で腎細胞がんが疑われ、もう一つ診断の根拠に乏しいという時にはおこなう場合があります。6. 骨シンチ
骨転移の有無の判定に用います。腎細胞がんの病期
Ⅰ期:腎臓内に限局している7cm以下のがん
Ⅱ期:腎臓内に限局している7cmより大きいがん
Ⅲ期:腎臓周囲の組織(脂肪・血管)に拡がる、または1つのリンパ節に転移しているもの
Ⅳ期:腎臓周囲のGerota筋膜を超えたり、2個以上のリンパ節に転移したり、他の臓器に転移したもの
治療
腎細胞がんは放射線、抗がん剤治療が効きにくく、手術療法が基本となります。
転移病変に対しては、切除術や免疫療法を行っていましたが、近年、分子標的薬という新しいタイプの治療薬が発売され、効果が期待されています。
■ 手術の種類
1) 腎摘除術 (腹腔鏡下手術、開腹手術)
腎摘除術は標準療法とされている術式で、がんのある腎臓を周囲の脂肪組織とともに一塊として摘出する手術です。Ⅲ期およびⅣ期では、腎臓と腎周囲の脂肪組織に加え、副腎も摘出します。また、がんがリンパ節に転移している場合には、リンパ節を切除することもあります(リンパ節郭清)。
主な適応:全身状態が良好。反対側の腎機能が正常。腫瘍径が大きく、腎部分切除術を行えないなど。
2) 腎部分切除術 (ロボット支援下手術、腹腔鏡下手術、開腹手術)
腎部分切除術は、がんとその周囲の腎実質を部分的に切除する手術です。当院では2017年8月よりロボット支援下手術を開始しており、手術件数も増加しています。
主な適応:腫瘍径が4cm以下、ある程度外方に突出している腫瘍。正常な機能の腎臓が1つしかない。両側の腎臓にがんがある。反対側の腎機能が低下しているため、全摘出により腎不全になることが予想される。など。
■ 手術のアプローチ
1) 腹腔鏡下手術
腹部に5~10mmの穴を4~5ヵ所あけて、内視鏡や手術器具を挿入し、モニターで確認しながら手術を行います。傷が小さく出血が少ないため、早く退院できるなどのメリットがあります。早期のがんに適用し、治療成績は開腹手術と差がないといわれています。ただし、患者さんによっては適用できない場合もあります。
2)ロボット支援下手術
2016年4月よりロボット支援腎部分切除術が保険適応となりました。当院でも2017年8月より小径の腎腫瘍に対してロボット支援下腎部分切除術を開始しています。従来の腹腔鏡下手術では、腎腫瘍の摘出と摘出部の縫合を正確に行うために非常に高い技術が必要であり、開腹手術よりも腎血流を遮断する時間が長くなることが欠点でした。従って術後の腎臓機能の保持について不利であるとの懸念がありました。ロボット支援下腎部分切除術では同じ腹腔鏡下手術でありながら、腫瘍の切除および切除部分の縫合を従来の開腹手術以上に正確かつ迅速に行うことができるため、癌の根治度を犠牲にすることなく、腎臓機能を最大限温存することが可能です。
3) 開腹手術
大きながんやがんが周囲の組織に及んでいたり、リンパ節に転移している場合は、一般的には開腹手術を適用します。腎臓に到達するには腹膜をあけて一度腹腔内に入り、さらに腎臓の前を覆っている後腹膜を切開する必要があります。
転移病変に対しては、切除術や免疫療法を行っていましたが、近年、分子標的薬という新しいタイプの治療薬が発売され、効果が期待されています。
1.手術療法
手術療法は、根治が望める唯一の治療法です。腎細胞がんと診断されたら、通常は原発巣の手術を行います。腎臓は2つあるため、患側の腎臓のすべてを摘出する腎摘除術が標準とされています。しかし、最近では人間ドックなどの検診の普及や画像検査の進歩に伴って、症状のない腫瘍径の小さな腎細胞がんが発見されることが多くなったことや、慢性腎臓病(CKD)の考え方が普及してきたことによって腎機能を温存する目的からも、病変部分のみを切除する腎部分切除術も多くなってきました。手術法についても、開腹手術では社会復帰に時間がかかるとともに、傷の痛みがつらいこともあり、より侵襲の少ない手術として、今日では腹部に小さな穴をあけ、内視鏡を挿入する腹腔鏡下手術が広く行われています。また、再発が発見された場合も、患者さんの全身状態が良好で転移巣が切除できる場合には、転移巣の切除術を行うことが推奨されています。なお、手術でがんをとりきれた場合でも5~10年経ってから転移が見つかることもあるので、術後10年以上の経過観察が必要になります。■ 手術の種類
1) 腎摘除術 (腹腔鏡下手術、開腹手術)
腎摘除術は標準療法とされている術式で、がんのある腎臓を周囲の脂肪組織とともに一塊として摘出する手術です。Ⅲ期およびⅣ期では、腎臓と腎周囲の脂肪組織に加え、副腎も摘出します。また、がんがリンパ節に転移している場合には、リンパ節を切除することもあります(リンパ節郭清)。
主な適応:全身状態が良好。反対側の腎機能が正常。腫瘍径が大きく、腎部分切除術を行えないなど。
2) 腎部分切除術 (ロボット支援下手術、腹腔鏡下手術、開腹手術)
腎部分切除術は、がんとその周囲の腎実質を部分的に切除する手術です。当院では2017年8月よりロボット支援下手術を開始しており、手術件数も増加しています。
主な適応:腫瘍径が4cm以下、ある程度外方に突出している腫瘍。正常な機能の腎臓が1つしかない。両側の腎臓にがんがある。反対側の腎機能が低下しているため、全摘出により腎不全になることが予想される。など。
■ 手術のアプローチ
1) 腹腔鏡下手術
腹部に5~10mmの穴を4~5ヵ所あけて、内視鏡や手術器具を挿入し、モニターで確認しながら手術を行います。傷が小さく出血が少ないため、早く退院できるなどのメリットがあります。早期のがんに適用し、治療成績は開腹手術と差がないといわれています。ただし、患者さんによっては適用できない場合もあります。
2)ロボット支援下手術
2016年4月よりロボット支援腎部分切除術が保険適応となりました。当院でも2017年8月より小径の腎腫瘍に対してロボット支援下腎部分切除術を開始しています。従来の腹腔鏡下手術では、腎腫瘍の摘出と摘出部の縫合を正確に行うために非常に高い技術が必要であり、開腹手術よりも腎血流を遮断する時間が長くなることが欠点でした。従って術後の腎臓機能の保持について不利であるとの懸念がありました。ロボット支援下腎部分切除術では同じ腹腔鏡下手術でありながら、腫瘍の切除および切除部分の縫合を従来の開腹手術以上に正確かつ迅速に行うことができるため、癌の根治度を犠牲にすることなく、腎臓機能を最大限温存することが可能です。
3) 開腹手術
大きながんやがんが周囲の組織に及んでいたり、リンパ節に転移している場合は、一般的には開腹手術を適用します。腎臓に到達するには腹膜をあけて一度腹腔内に入り、さらに腎臓の前を覆っている後腹膜を切開する必要があります。
2.免疫療法
転移のある進行がんに対して、インターフェロンやインターロイキンといった免疫を高めることにより癌を殺す治療法(免疫療法)がおこなわれます。しかし、免疫療法は肺への転移などにはある程度の効果が期待できますが、効果の乏しい場合も多いのが現状あり、奏効率は10~20%と言われています。副作用としては発熱、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感、食思不振、骨髄抑制、間質性肺炎、神経精神症状などがあります。3.分子標的薬
2008年以降分子標的薬という薬剤が、腎細胞がん治療の主体となりました。分子標的治療薬は、腫瘍細胞の増殖や血管内皮細胞の増殖にかかわる細胞内シグナル伝達を阻害することによって腫瘍の増殖を抑える薬です。薬剤によって内服薬や点滴薬などがあります。2021年8月時点、本邦では腎細胞がんに対しては7種類の分子標的薬が使用可能です。副作用としては、高血圧、疲労、下痢、皮膚炎、肝機能障害、間質性肺炎などがあります。4.免疫チェックポイント阻害剤
現在では免疫チェックポイント阻害剤の併用療法(イピリムマブ+ニボルマブ)、分子標的薬と免疫チェックポイント阻害剤の併用療法(アキシチニブ+アベルマブ、アキシチニブ+ペンブロリズマブ)が進行性腎細胞がんの1次治療の主体となっています。患者さんのリスクに応じて薬剤の選択を行っていきます。また、免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブ単剤での治療は2次治療、3次治療の選択肢の1つです。免疫チェックポイント阻害剤の主な副作用としては、疲労感、味覚異常、吐き気のほか、下痢・口内炎などの胃腸障害、かゆみ・発疹などの皮膚障害があります。その他、腎臓や肝臓などの内臓機能の障害、糖尿病や甲状腺機能障害などの内分泌系の障害、間質性肺炎など、全身のあらゆる部位にさまざまな症状を引き起こす可能性があります。治療終了後、数週間から数カ月たって副作用があらわれることもあるため注意が必要です。5.放射線治療
腎細胞がんでは放射線治療の効果があまりよくないため、腎臓にある腫瘍自体の治療のために放射線照射を行うことは稀です。しかし、骨や脳などに腎細胞がんが転移をした場合など、症状を抑えることや治療目的で照射を行う場合があります。当院における腎細胞がんに対する手術件数の年次推移
院内がん登録情報
担当部署と専門医
部門 | 担当医 | 外来診療 |
---|---|---|
泌尿器科 | 井川 掌 | 月曜日午前、木曜日午前 |
末金 茂高 | 火曜日午前、水曜日午前 | |
松尾 光哲 | 水曜日午前、金曜日午前 | |
名切 信 | 火曜日午前、金曜日午前 | |
西原 聖顕 | 木曜日午前 | |
築井 克聡 | 月曜日午前 | |
渡辺 晃太 | 木曜日午前 | |
上村 慶一郎 | 月曜日午前 | |
小笠 原尚之 | 火曜日午前 | |
大西 聡 | ||
伊東 直城 | ||
中村 陽介 | ||
小宮 景介 | ||
坂井 友弥 | ||
小嶺 信之亮 | ||
徳永 高帆 | ||
末金 宏基 | 金曜日午前 | |
星野 龍志 | ||
泌尿器科・病理学 | 植田 浩介 | 水曜日午前 |
放射線科 (放射線腫瘍センター) |
||
緩和ケアセンター |
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