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久留米大病院

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腫瘍センター

皮膚がん

はじめに

皮膚は表皮・真皮・皮下組織の3つの部分に大きく分かれます。さらに表皮は角質層・顆粒層・有棘層・基底層に分かれます。基底層(表皮最下層)と真皮の間には基底膜があります。真皮~皮下組織にかけて、毛包・脂腺・汗腺という表皮と構造の類似した皮膚付属器があります。真皮・皮下には他に脂肪織・血管・立毛筋などの上皮以外の重要な組織と神経があります。これらのうち、表皮と皮膚付属器の細胞が悪性化したものを総称して「皮膚がん」と呼びます。ごく稀なものまで含めると種類は非常に多いです。

皮膚の異常は直接目で見ることができるので、皮膚がんは早期に発見できる可能性が高い反面、自分で良性と判断し様子を見ていて発見が遅れる場合もあります。慢性に紫外線を浴び続けることや大量に浴びた放射線により皮膚がんが発症することはよく知られています。昔に負ったひどいヤケドやケガのキズ痕や何年も治らないジクジクした皮膚病の一部から皮膚がんができることもあります。一方、ホクロや湿疹だと思っていたら、実はがんだったという例もあります。皮膚にできた病変を見つけて「気になる」と思われたら、自分で勝手に判断せずに、面倒でも一度は皮膚科専門医に見せることが重要です。最も一般的な種類は基底細胞がんと有棘細胞がんで、これらは非メラノーマ皮膚がんと呼ばれます。非メラノーマ皮膚がんは体の他の部位まで拡がることは稀です。一方、メラノーマは周辺組織に浸潤し、体の他の部位まで拡がる可能性がより高くなり時には手遅れになることも稀ではありません。
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診断

1.ダーモスコピー検査

ダーモスコピー検査とは、ほくろなどの病変部に超音波検査用のジェルを塗布してから、ダーモスコープという特殊な拡大鏡を皮膚面に当て、皮膚に分布するメラニンという色素や毛細血管の状態を調べる検査です。皮膚を観察して、デジタルカメラで記録するだけの簡単な検査で、痛みは全くありません

2.病理検査

異常にみえる増殖部のすべてまたは一部を皮膚から切除し、病理医が顕微鏡下で観察して、がんの徴候がないかを調べます。主に3種類の皮膚生検があります。 薄片生検:滅菌処理したカミソリの刃を用いて異常にみえる増殖部を削り取ります。パンチ生検:パンチまたは穿孔器と呼ばれる専用の器具を用いて異常にみえる増殖部から組織を円形に取り除きます。切除生検:メスを用いて全ての増殖部を取り除きます。

3.センチネルリンパ節生検

悪性黒色腫の病期(ステージ)診断に用いられる。リンパ管を通じて最初に流れ着くリンパ節がセンチネルリンパ節であり、センチネルリンパ節に転移がないと判断された場合はリンパ節郭清が省略でき、運動障害や知覚異常、浮腫やむくみ(リンパ浮腫)などの後遺症を軽減することができメリットがあります。 ただし、偽陰性(センチネルリンパ節以外のリンパ節に転移がある)が、ある割合で存在するため、リンパ節転移のある人を見逃す危険性もあります。この検査は保険適応されていますが、保険で認可されている限られた専門病院でしか受けることができません。
また、近年有棘細胞癌の一部、メルケル細胞癌、乳房外パジェット病にも保険適応が拡大され実施症例が増えています。

4.CT検査/MRI検査

CTは、X線を使って体の内部を描き出し、治療前に転移や周辺のがんの広がりを調べる。MRIは磁気を使用する。造影剤を使用する場合、アレルギーが起こることがあります。ヨードアレルギーの経験のある人は医師に申し出る必要があります。

5.超音波検査

体に超音波をあてて、その反響で体内の状態を調べる方法。原発巣(最初に発生したがん)の進行度の重要な指標である厚さを予測し、リンパ節などへの転移の検索に役立ちます。

6.PET検査

放射性ブドウ糖液を注射し、その取り込みの分布を撮影することで、全身のがん細胞を検出する検査。

7.腫瘍マーカー検査

血液検査で腫瘍マーカーの値を参考にすることもあります。しかし腫瘍マーカーはかなり進行した段階で上昇するものなので、早期診断に有用とはいえません。
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治療

1.外科療法

腫瘍の周りの正常に見えるところを含めて、幅も深さも余裕をもって切除する必要があります。これは、腫瘍そのものだけを切除しても、再発や転移をおこす可能性があるためです。手術により皮膚の欠損が大きくなった場合には、皮弁または植皮術をはじめ、形成外科的な方法で傷を治します。 またリンパ節転移などを認める症例において所属リンパ節郭清術を行います。

2.凍結療法

液体窒素を使って癌組織内の温度が-20~-50℃になるように冷やし、癌細胞を凍結壊死させる方法です。凍結療法は治療時や治療後の身体への影響の少ない方法なので、高齢の方や持病のために身体の具合が悪い方にも適しています。

3.放射線療法

有棘細胞がんは皮膚がんの中でも放射線療法がよく効くもののひとつです。一般的に、X線や電子線を専用の器械を使って身体の外側から照射する方法がとられます。通常1回の照射は短時間で終わるため、放射線療法は通院しながら受けることも可能です。皮膚がんの種類によっては放射線の効果が得られにくい癌腫もあります。

4.化学療法

ある程度がんが進行している場合には、全身療法である化学療法が治療の中心となります。また、有棘細胞がんは頭、顔、首など人目につく部位にできることが多いので、切除する部分が少なくてすむように、手術前に抗がん剤でがんをできるだけ小さくしておく場合もあります。 皮膚がんの中でも悪性黒色腫の化学療法の進歩は目覚ましいものがあり悪性黒色腫に注目して化学療法を述べたいと思います。

1) 分子標的薬
分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わる分子を攻撃する薬です。一部の悪性黒色腫の患者様にBRAFと呼ばれる遺伝子変異が進行に関わっていることがわかっており、腫瘍組織でBRAF遺伝子変異があると確認された場合に変異BRAFの働きを阻害するダブラフェニブ、トラメチニブ、ベムラフェニブなどが効果を示すことが期待されます。T細胞の増殖、活性化によってがんを抑制することができると考えられています。がんの縮小は半数以上に認められますが、使い続けると薬が効きにくくなる薬剤耐性が起こり得ること、ほかの皮膚がんができてしまうこと、皮膚障害、肝機能障害、発熱、眼障害などの副作用に注意が必要です。

2) 免疫チェックポイント阻害薬
免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫から逃げようと細胞にかけたブレーキを解除して、体内にもともとある免疫細胞を活用する作用のある薬です。手術ができない場合や再発した場合の悪性黒色腫に対して用いられています。悪性黒色腫に対して、抗PD1抗体であるニボルマブ、ペムブロリズマブ、抗CTLA4抗体であるイピリムマブなどが用いられ、ニボルマブとイピリムマブは併用することができます。がんの縮小はおよそ10~40%に認められ、一度効果があると長く続くこともあります。免疫関連有害事象という副作用が起こり得ます。肺炎や肝障害、下痢・大腸炎、皮膚障害、内分泌障害、神経・筋障害などの副作用が、治療が終了してから数週間から数カ月後に生じることもあるため注意が必要であり、一部の副作用は免疫チェックポイント阻害剤を中止しても残ることがあります。
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担当部署と専門医

部門 担当医 外来診療
皮膚科 名嘉眞 武國 月曜日午前
石井 文人  
古賀 浩嗣   
橋川 恵子  
武藤 一考 月曜日午前、水曜日午前
名嘉眞 健太  
病理部 秋葉 純  

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