2024.08.16
【切らない乳がん治療】 早期乳がんに対するラジオ波焼灼療法を開始しました—新たな低侵襲乳がん治療法の導入について-
当院では、乳がんに対する新しい治療法として、ラジオ波焼灼療法(Radiofrequency Ablation Therapy:RFA)を開始いたしました。この治療法は、乳房を切除せずに、外見を保ちながら乳がんを治療できる画期的な方法です。
2023年12月には、世界に先駆けて日本でRFAが保険診療に収載され、乳がんの標準治療のひとつとして位置づけられました。そして、2024年6月に久留米大学病院は日本乳がん学会から乳がんRFA治療の実施医療機関として認定され、当院乳腺外科での治療が可能となりました。2024年8月13日現在、福岡県内でこのRFA治療を受けられるのは、当院を含めて3施設のみとなっています。
RFA治療の対象は、腫瘍径が1.5cm以下で、腋窩リンパ節転移および遠隔転移が認められない限局性早期乳がんの患者さんです。
治療に際しては、まず全身麻酔下でセンチネルリンパ節生検を行い、その後、超音波画像を用いて乳がん腫瘍に直径1~2mmの電極針を刺入し、約472kHzのラジオ波電流を流して約70℃で10分間加熱し、腫瘍を完全に焼灼します。手術時間はおよそ1時間、入院期間は4~5日程度です。
これまでの臨床試験(RAFAELO試験)によると、RFA治療は従来の乳房温存手術と同等の根治性を持ち、低侵襲でありながら高い術後の整容性を保てることが確認されています。また、術後の出血や痛みが少なく、患者さんは早期に社会復帰が可能です。合併症としては、皮膚熱傷(1.9%)、乳房の硬結(2.7%)、皮下出血(1.1%)などが報告されています。
術後は、従来の手術療法と同様に、放射線療法や薬物療法、定期的な画像診断が必要です。また、腫瘍が残存しているかどうかを確認するため、放射線治療後に組織検査を受けることが必須となります。検査結果によっては、追加の手術が必要になる場合もあります。
このように、特に検診で早期に発見された乳がん患者さんにとって、乳房を切らない新しい治療法が加わったことは、大変画期的であり喜ばしいことです。当院乳腺外科では、従来の標準的な手術療法とRFAによる非手術治療の両方の特徴を丁寧にご説明し、患者さんが納得されたうえで最適な乳がん治療をお選びいただけるよう、全力でサポートいたします。今後も、患者さんとともに乳がんの根治を目指して取り組んでまいります。
令和6年8月16日
【治療に関する問い合わせ先】
乳腺外科・一般外科総合外来
TEL:0942-31-7612
FAX:0942-31-7612
E-mail:geka-group@kurume-u.ac.jp