睡眠医療外来
治療方法
CPAP(持続陽圧呼吸)療法
CPAP療法とは、CPAP装置本体からエアチューブ、鼻マスクを介して気道内に陽圧をかけ、気道の閉塞を防ぐことにより、無呼吸を取り除く療法です。夜間のみに使用し、その効果は使用した翌朝に実感できる方もいます。重症OSAS(閉塞型睡眠時無呼吸症候群)においてCPAP治療群と無治療群を比較した場合、CPAP治療群のほうが明らかに予後が良いという報告など、多くの研究によって、中等~重症OSASに対して治療効果が証明されています。
治療効果
- 無呼吸、低呼吸、いびきの改善
- 血液ガスの改善
- 睡眠の質の向上
- 日中の眠気などの改善
- 高血圧や狭心症など合併症の改善
費用
健康保険の適応となっていますが、保険を用いるためには月に1回の受診が義務付けられています。
CPAP装置の選択
処方された一定の陽圧を供給する固定CPAP装置が一般的に広く用いられています。
一方、オートCPAPは固定CPAPの至適圧の選定(タイトレーション)の補助や、導入初期の治療効果の評価に有用です。また、固定CPAPでは圧力に対して不快感を訴えるなど、場合によってはオートCPAPを用いることがあります。
一方、オートCPAPは固定CPAPの至適圧の選定(タイトレーション)の補助や、導入初期の治療効果の評価に有用です。また、固定CPAPでは圧力に対して不快感を訴えるなど、場合によってはオートCPAPを用いることがあります。
高性能ファンモーターの採用により静かで安定した圧力を供給するため、ベッドパートナーの睡眠を妨げることなく快適なCPAP療法が行えます。
CPAPの副作用
CPAPに重篤な副作用はありませんが、マスクによる皮膚のかぶれ、空気の漏れによる不快感、口鼻の乾燥などがあります。
しかし、マスクの選択や加温加湿器の併用などの対処で改善できます。
しかし、マスクの選択や加温加湿器の併用などの対処で改善できます。
歯科的治療
睡眠医療外来を受診された患者さんには、当院の歯科口腔医療センターにおいて、以下のような流れで治療を受けて頂きます。
- 診察(初診日)睡眠医療外来で撮影を行った顎顔面のX線分析と口腔内の診査
顎やその周囲の形態が無呼吸に影響があるのか診査を行います。 - マウスピース(口腔治療装置)による治療
マウスピース治療の場合には、当センターを受診して頂きます。口腔診査や歯型の採取などを行って、マウスピースを作製します。調整を行いながらマウスピースを装着します。また、治療効果を確認するために、X線検査や睡眠ポリグラフ検査を行います。
マウスピースによる治療
<適応>
- 軽症~中等症の睡眠時無呼吸症でマウスピース治療が効果的と診察された方。(健康保険の適応です)
- いびきが主な症状の方。(健康保険は適応されません)
以上のような症状の方が治療の中心です。
睡眠時マウスピースを装着して寝ていただく事で症状の改善が期待できます。
※歯がない方、歯周病や顎関節症などの疾患がある方、歯ぎしりをされる方など、マウスピース治療ができない場合があります。
睡眠時マウスピースを装着して寝ていただく事で症状の改善が期待できます。
※歯がない方、歯周病や顎関節症などの疾患がある方、歯ぎしりをされる方など、マウスピース治療ができない場合があります。
マウスピースとは?
寝ている間だけ口腔内に装着していただきます。下顎を前方に移動させることにより、舌の気道内への落ち込みを防止したり、気道の幅を広く保つ働きがあります。
作製は、まず歯型をとってから行われます。作製期間は2週間ほどですが、完成してからも定期的に調整を行う必要があります。
いくつかの種類があり、写真の固定型や、下顎の位置を調整できるようにしたものもあります。
作製は、まず歯型をとってから行われます。作製期間は2週間ほどですが、完成してからも定期的に調整を行う必要があります。
いくつかの種類があり、写真の固定型や、下顎の位置を調整できるようにしたものもあります。
マウスピースの特徴
- 比較的簡単で負担の少ない治療です。
- 携帯に便利で、旅行先や出張先でも使用できます。
- 治療効果には個人差があります。
- このため、治療効果判定の検査が必ず必要です。
- 使い始めには歯や顎の関節に違和感が出ることがあります。
- 治療効果はずっと一定しているわけではありませんので、定期的な調整や検査が大切です。
- マウスピースはお口の中に入れて使うものです。マウスピースだけでなく、普段の歯磨きも丁寧に行ってお口の中も清潔に保ってください。
耳鼻科的治療
診断
- 上気道(鼻腔・口腔・咽喉頭)の評価
- 顎顔面形態の評価
治療
1.選択
- 咽頭拡大術の適否
- CPAPの適否
- 口腔内装置の適否
- 治療の順序を決める
2.導入
- 鼻副鼻腔疾患
- 咽喉頭疾患の治療
扁桃肥大の診断(Mackenzie分類)
覚醒時に擬似的にいびき音を出させ、咽頭の閉塞パターンを観察します。
いびき音テスト
覚醒時に擬似的にいびき音を出させ、咽頭の閉塞パターンを観察します。
睡眠時呼吸障害(SDB)に対する咽頭拡大術の適応
1.咽頭拡大術がSDBの治療の中心となる場合。
- 扁桃肥大がある(II度以上)。
- いびき音テストで狭窄が左右型。
- 顎顔面形態上のリスクが小さい。
2.咽頭拡大術単独では効果が不十分だが、CPAP、口腔内装置など他の治療の補助として必要な場合。
- 扁桃肥大がある。
- いびき音テストで狭窄が左右型。
咽頭拡大術前後のAHIの変化
※1時間当たりの無呼吸の回数を無呼吸指数(Apnea Index、略してAI)と言います。
※1時間当たりの換気が50%以下に低下する回数を低呼吸指数(Hypopnea Index、略してHI)と言います。
※睡眠1時間当たりの無呼吸と低呼吸の合計の回数を無呼吸低呼吸指数(AHI)と言います。
<2002年5月~2004年12月、術後3ヶ月で判定>
※1時間当たりの換気が50%以下に低下する回数を低呼吸指数(Hypopnea Index、略してHI)と言います。
※睡眠1時間当たりの無呼吸と低呼吸の合計の回数を無呼吸低呼吸指数(AHI)と言います。
<2002年5月~2004年12月、術後3ヶ月で判定>
1.咽頭拡大術を治療の中心とした症例。
(10例、全て男性、平均年齢31.9歳)
AHI:54.7→14.3(AI:40.0→2.8)
改善度73.8%(93.0%)
AHI:54.7→14.3(AI:40.0→2.8)
改善度73.8%(93.0%)
2.咽頭拡大術を補助的治療として行なった症例。
(12例、全て男性、平均年齢37.1歳)
AHI:74.0→36.2(AI:43.3→14.6)
AHI:74.0→36.2(AI:43.3→14.6)
改善度51.1%(66.3%)
咽頭拡大術単独で著効した例
CPAPと咽頭拡大術を組み合わせた1例
栄養指導
肥満は睡眠時無呼吸症候群の原因となることがあります。だからといって、以下のような誤った知識・認識でのダイエット(減量)は身体を壊す危険性があります。
誤った知識・認識でのダイエット(減量)
- 食事をしないことで痩せようとする。
- ご飯を食べると太ると思い、ご飯を食べない。
- 間食はしていないと言いつつ、菓子パンを主食にする。
- サラダは身体に良いと言いつつ、ドレッシングやマヨネーズをたっぷりかける。
- 運動さえすれば痩せると思っている。
- 体脂肪の付きにくい油なら、いくら食べても太らないと思っている。
そこで、久留米大学病院栄養部では、間違った食習慣を改善し、減量がうまくいくように食の専門家・管理栄養士がサポートします。
運動療法
睡眠時無呼吸症候群のための運動療法は、いつでも、どこでも、一人でできる運動で有酸素運動が適しております。当院では、一人ひとりの健康状態、体力に合ったプログラムで運動を進めるため、身体への大きな負担はありません。また、専門の理学療法士が担当しますので、安心して運動に取り組むことができます。
運動の効果
- エネルギー消費が増加します。
- 体重(体脂肪)が減少します。
- 脂質の代謝を改善します。
- 心臓・肺の機能が改善し、それらの機能を強くし持久力が向上します。
- 運動中の呼吸困難や不安感を改善します。
- ストレスの発散、精神的安定効果が得られます。
運動療法の流れ
睡眠時無呼吸症候群に対する運動療法の指導
当院では下記の指導を理学療法士が行います。
- 肥満・減量の理解
- 有酸素運動と無酸素運動
- ウォーミングアップ・クールダウンでの柔軟体操
- 呼吸法の指導
- 姿勢の矯正・指導
運動療法実施
次に、ご本人のライフスタイルに適した運動をご家庭でも行えるよう、個人のプログラムを作成し、指導・アドバイスを行います。
- 有酸素運動(ウォーキング/ストレッチング)
- 無酸素運動(筋力トレーニング)
- 呼吸訓練法(腹式呼吸)
- 姿勢矯正(体幹筋のトレーニング)